
News Observation Lab for Future
会話だけでは残らない意思決定――ADRで永続化する方法

はじめに
AI コーディングで最も高価な失敗は、間違った判断ではなく「書き留められなかった」判断です。会話の中で決まったことはコンテキストウィンドウが閉じれば蒸発し、次のセッションで再利用できません。
会話は契約ではない
チャット上の合意は一時的な指示ストリームに過ぎず、履歴やアーカイブがありません。そのため、チャットに残った決定は実質的に未決定です。将来のモデルや人間が参照できる形でファイルに保存しなければ、効果は失われます。
ドリフトの三つの形態
1. **メモリドリフト** – 人間は覚えているが、AI は記録が無いため同じ質問を再度議論します。
2. **アーキテクチャドリフト** – 各世代が小さな逸脱を積み重ね、結果として設計から大きく外れたコードになる。
3. **繰り返し議論ドリフト** – 同じ議論が新しいエージェントごとに再燃し、過去の結論が忘れ去られます。
これらはすべて「権威ある場所に『我々はXを選択した』という記録が無い」ことが根本原因です。
単一情報源としての ADR
長年エンジニアリングで信頼されてきた「単一情報源」の概念を、AI 時代でも適用します。決定は一箇所に記録し、そこから派生・引用させることで、モデルが自律的に境界を認識できます。ADR(Architecture Decision Record)はこの役割を担います。
ADR に必要な七つの項目
– **ステータス**:提案、承認、廃止など。空白は不可。
– **決定者**:誰が所有したか。委任先でも可。
– **コンテキスト**:選択を迫った状況。
– **決定内容**:曖昧さのない具体的な選択。
– **理由**:代替案より優れている根拠。
– **影響**:現在と将来のコスト。
– **緩和策**:コストが顕在化した際の対応策。
これらを揃えることで、次回以降のセッションは「何を選んだか」だけでなく「なぜ選んだか」を即座に把握できます。
Swarm‑Fed ADR の活用
複数のエージェントが協働して解決した課題は、その場で正式な ADR として記録し、単一情報源へフィードバックします。トップダウンの制約だけでなく、現場で得た知見が下位層にも蓄積され、生きた規則となります。
記録だけでは不十分
ADR がコードと紐付いていなければ、単なる日記に過ぎません。チェック機構やゲートで実際にコードが ADR を遵守しているか検証しなければ、ドリフトは止まりません。変更前に必ず ADR を作成する習慣が、未来の誤解を防ぎます。
次のステップ
次回は「契約層」について取り上げ、仕様から AI の約束への変換とその検証方法を探ります。
元記事: https://dev.to/derekwang85/a-decision-you-didnt-write-down-isnt-a-decision-16bc